引渡命令

【引渡し命令とは】

執行裁判所が、債務者、所有者及び占有者に対して、買受人に競売不動産を引き渡すように命じる裁判を言います。通常訴訟を定義して判決まで要する期間と比較すると簡易迅速な裁判手続きであるが、実際には買受人が占有を確保するまでには時間と費用が掛かります。

【引渡し命令の対象】

  1. 債権者・所有者
  2. 物件明細書にある「買受人が負担することとなる他人の権利」欄に記載されていない占有者

【引渡し命令の手続き】

①引渡命令の申し立て

  • 申し立てができるのは、代金納付日から6ケ月(代金納付時に明け渡し猶予を受ける占有者がいた建物の買受人については9ケ月)に限られます。
  • 申し立て費用は、相手方1名につき500円の収入印紙と決定正本の送達料金が必要になります。
  • 申し立ては申立書をを作成して提出致します。申し立ての書き方、添付書類、納付すべき送達料は、執行裁判所の引渡命令窓口に確認することが可能です。
  • 相手方が法人の場合で、その代表者若しくは管理人が欠けている場合、又は代表権を行うことができない場合などでは、原則、特別代理人の選任が必要になります。同手続きを行うには、申立費用500円のほか、別途費用の予納が必要になりますので、申立書同様に執行裁判所の窓口に確認することが可能です。
  • 破産管財人が選任されてり、破産財団から不動産が放棄されていない場合は、その管理人を相手方とします。

②引渡命令の発令・送達

引渡命令が発令されると、当事者に送達されます。

③執行抗告期間

当事者に引渡命令が送達された日から1週間は、執行抗告を申し立てることができます。※高等裁判所に対する上訴。  

申立人も引渡命令申立却下に対して執行抗告を申し立てることが可能です。※公告状は地方裁判所に提出する。

執行抗告の申し立てが無くこの一週間を経過すると、引渡命令が確定します。

④執行文付与申立て・送達証明申請

引渡命令が確定したら、執行の準備として執行文付与申立てと送達証明の申請をし、執行文と送達証明書を取得します。(執行文は引渡し命令正本と一体にするため、申請時に引渡し命令正本を提出します)尚、これらには手数料(執行文一通につき300円、送達証明は相手方の数×150円の収入印紙)が必要になります。

⑤執行官に対する執行申立て

  • 引渡命令正本(執行文付き)と送達証明書を添付の上、引渡命令の申し立てを行います。(当事者が法人の場合は代表者事項証明書必要)
  • 所定の予納金
  • 申し立てを受けた執行官は、予定を立てて執行に着手します。当初、執行官は、相手方に対して原則1ケ月以内の期限を定めて明け渡すように催促ができ、この場合、民事執行法68条の2第3項に定める事項が当該不動産所在地に公示されます。それでも明渡しに応じなければ、運送会社の手配も並行して行うなど、本格的な明渡しの執行を行うことになります。